執筆者
弁護士法人Legal Home
代表弁護士 藤原 武士
経歴
- 愛知県豊橋市出身
- 東北大学法学部卒業
- 2010年8月司法修習終了(63期)
- 2010年9月他事務所で勤務
- 2017年10月藤原武士法律事務所 開設
- 2020年8月法人化し、弁護士法人藤原武士法律事務所へ。豊中オフィス開設
- 弁護士法人Legal Homeへ名称変更
亡くなった方が遺言書を残していた場合は、原則として、その内容に沿って財産を引き継ぎます。
しかし、「全財産を長男に相続させる」と書かれているなど、一部の相続人がほとんど財産を受け取れないことがあります。
このような場合に、一定の相続人へ保障されている最低限の取り分を「遺留分」といいます。
遺留分を下回る財産しか受け取れなかった方は、多くの財産を受け取った方に対して、不足する金額の支払いを求められる場合があります。この手続きを「遺留分侵害額請求」といいます。
遺言書そのものを無効にする手続きではなく、侵害された遺留分にあたる金銭を請求するものです。
遺留分は、すべての相続人に認められているわけではありません。
兄弟姉妹や甥、姪には遺留分がありません。
たとえば、子どものいない夫が「全財産を妻に相続させる」という遺言書を残していた場合、夫の兄弟姉妹は遺留分を請求できません。
一方、夫の母親が相続人になる場合は、母親に遺留分が認められる可能性があります。
遺留分の割合は、誰が相続人になるかによって変わります。
| 相続人 | 相続人全体の遺留分 |
|---|---|
| 父母や祖父母だけ | 遺産の3分の1 |
| それ以外の場合 | 遺産の2分の1 |
相続人が複数いる場合は、この割合を法定相続分に応じて分けます。
父親が亡くなり、母親と子ども2人が相続人になったとします。
相続人全体の遺留分は、遺産の2分の1です。それぞれの遺留分は、次のようになります。
| 母親 | 遺産の4分の1 |
|---|---|
| 子ども1人につき | 遺産の8分の1 |
遺留分を計算する際は、単純に相続人の人数で均等に分けるのではなく、それぞれの法定相続分を確認します。
父親が4,000万円の財産を残し、相続人が母親と長男、次男の3人だったとします。
遺言書には「全財産を長男に相続させる」と書かれていました。
この場合、母親と次男の遺留分は次のようになります。
| 母親 | 1,000万 |
|---|---|
| 次男 | 500万 |
長男が全財産を取得した場合、母親は1,000万円、次男は500万円の支払いを長男へ求められる可能性があります。
ただし、亡くなった方に借金があった場合や、生前贈与が行われていた場合は、計算が変わることがあります。
遺言書の内容が法定相続分と異なっていても、必ず遺留分が侵害されているとは限りません。
たとえば、法定相続分より少ない財産しか受け取れなかった場合でも、遺留分以上の金額を受け取っていれば、原則として不足額はありません。
遺留分を確認するときは、次の内容を整理します。
預貯金だけでなく、不動産や株式なども金額に換算して考える必要があります。
遺留分を計算するときは、亡くなった時点で残っていた財産だけでなく、生前に行われた贈与が含まれることがあります。
たとえば、父親が亡くなる前に、長男へ住宅購入資金として多額のお金を渡していた場合です。
その贈与が計算に含まれると、長男が受け取った財産の合計が増え、ほかの相続人が請求できる金額に影響することがあります。
ただし、すべての生前贈与が対象になるわけではありません。
いつ、誰が、どのような目的で財産を受け取ったのかを確認する必要があります。
遺産の多くが自宅や土地で、支払いに使える預貯金が少ないことがあります。
現在の制度では、遺留分を侵害された方は、原則として不動産の持分そのものではなく、金銭の支払いを求めます。
たとえば、長男が4,000万円の実家を相続し、妹から500万円の遺留分を請求された場合、長男は原則として金銭で支払う必要があります。
しかし、手元に十分な預貯金がなければ、次のような対応を検討することになります。
不動産を金銭の代わりに渡す場合は、所得税などが生じることがあります。支払い方法を決める前に、税金についても確認することが大切です。
遺留分侵害額請求には期限があります。
原則として、次のことを知った時から1年以内に請求する必要があります。
また、これらを知らなかった場合でも、相続が始まってから10年が経過すると、原則として請求できなくなります。
たとえば、父親が亡くなり、「全財産を長男に相続させる」という遺言書があることをすぐに知った場合は、その時点から1年の期限を考える必要があります。
遺産の金額がまだ分からない場合でも、期限は進みます。財産調査が終わるまで何もしないでいると、請求できる期間を過ぎるおそれがあります。
遺留分侵害額請求は、財産を多く受け取った方へ、請求する意思を伝えることで行います。
相手との話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の調停を利用できます。ただし、調停を申し立てただけでは、相手へ請求の意思を伝えたことにならない場合があります。
期限が近いときは、内容証明郵便など、いつ、どのような内容を伝えたのかを確認できる方法で請求することが大切です。
請求額がまだ確定していない場合でも、期限を過ぎないための対応を検討します。
戸籍を集め、誰が相続人になるのかを確認します。
遺言書がある場合は、誰がどの財産を受け取る内容になっているかを確認します。
預貯金、不動産、株式、借金などを調べます。
生前贈与が疑われる場合は、預貯金の取引履歴や不動産の名義変更も確認します。
相続人の組み合わせ、財産、借金、生前贈与、ご自身が受け取った財産をもとに計算します。
不動産がある場合は、その価値について意見が分かれることがあります。
期限内に、財産を多く受け取った方へ遺留分侵害額を請求する意思を伝えます。
後から送付日や内容を確認できる方法を選ぶことが大切です。
具体的な請求額や支払期限、一括払いか分割払いかなどを話し合います。
合意できた場合は、内容を書面にまとめます。
話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所へ遺留分侵害額の請求調停を申し立てます。
調停でも解決できない場合は、地方裁判所または簡易裁判所で訴訟を行うことがあります。
遺留分侵害額の請求調停では、調停委員を交えて話し合います。
調停では、裁判所が一方的に金額を決めるのではなく、当事者同士の合意を目指します。
分割払いにする、支払期限を設けるなど、双方の事情に合わせた解決を話し合うこともできます。
遺留分侵害額請求は、請求する方だけの問題ではありません。
遺言書によって多くの財産を受け取った方や、生前贈与を受けた方が、請求を受けることがあります。
請求書が届いた場合は、すぐに提示された金額を支払うのではなく、計算の根拠を確認しましょう。
不動産しか受け取っておらず、すぐに現金を用意できない場合は、支払期限や方法について話し合う必要があります。
相手から届いた書面を放置すると、調停や訴訟へ進むこともあるため、早めに内容を確認しましょう。
遺言書を作成した当時、亡くなった方が内容を理解できる状態ではなかった場合や、遺言書の形式に問題がある場合は、遺言書の有効性そのものが争いになることがあります。
遺言書が無効であれば、遺留分の問題ではなく、通常の遺産分割が必要になる可能性があります。
ただし、遺言書が無効かどうかの争いと、遺留分侵害額請求は別の問題です。
遺言書の無効を主張している間に、遺留分を請求する1年の期限が過ぎるおそれもあります。遺言書の有効性に疑問がある場合でも、遺留分の期限を確認しておくことが大切です。
遺産分割は、相続人全員で遺産の分け方を決める手続きです。
一方、遺留分侵害額請求は、遺言書や生前贈与によって最低限の取り分を受け取れなかった方が、財産を多く受け取った方へ金銭を求めるものです。
| 遺産分割 | 遺留分侵害額請求 |
|---|---|
| 相続人全員で話し合います | 請求する方と請求を受ける方が話し合います |
| 主に遺言書がない場合に行います | 遺言書や生前贈与がある場合に問題となります |
| 財産そのものの分け方を決めます | 原則として不足する金銭を請求します |
| 相続人全員の合意が必要です | 相手へ請求する意思を伝える必要があります |
遺言書があっても、一部の財産について遺産分割が必要になることがあります。どの手続きで対応すべきか、遺言書と財産の内容から確認します。
遺留分侵害額の支払いによって、相続税の計算が変わることがあります。
すでに相続税を申告した後に支払額が決まった場合は、税金を追加で申告したり、納め過ぎた税金の返還を求めたりする手続きが必要になることがあります。
また、金銭の代わりに土地や建物を渡した場合は、譲渡所得に関する税金が生じる可能性があります。
遺留分の合意をするときは、支払う金額だけでなく、その後の税務手続きまで確認しておくことが大切です。
遺言書を見て「自分が受け取れる財産がほとんどない」と分かっても、すぐに請求できる金額を判断できるとは限りません。相続人、財産、借金、生前贈与、不動産の価値などを確認した上で、遺留分を計算する必要があります。
弁護士法人Legal Homeでは、初回60分の無料相談で遺言書や戸籍、財産に関する資料を確認し、遺留分を請求できる可能性や期限を整理します。相手へ請求する場合は、通知の作成から金額や支払い方法の交渉、調停や訴訟まで対応します。
遺留分を請求された方からのご相談にも対応しています。不動産の評価や相続税の手続きが関係する場合は、不動産鑑定士や税理士などとも連携して進めます。
遺言書の内容に納得できない方や、遺留分に関する書面が届いた方は、1年の期限を過ぎたり、内容を確認しないまま合意したりする前にご相談ください。




