遺産分割審判

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話し合いで決まらない遺産の分け方を裁判所が判断します

話し合いで決まらない遺産の分け方を裁判所が判断します

遺産分割について相続人同士で話し合っても、意見がまとまらないことがあります。
たとえば、実家を残したい方と売却したい方がいる場合や、不動産の評価額、生前贈与、介護の負担について考えが分かれている場合です。
家庭裁判所で行う遺産分割調停でも合意できなかったときは、原則として「遺産分割審判」へ移ります。
遺産分割審判とは、相続人同士の話し合いではなく、裁判官が提出された資料やそれぞれの主張を確認し、遺産の分け方を決める手続きです。調停が不成立になると、通常は改めて申立てをしなくても審判手続きが始まります。

遺産分割調停との違い

遺産分割調停と遺産分割審判では、結論の決まり方が異なります。

手続き 結論の決まり方 主な特徴
遺産分割調停 相続人全員の合意で決まります 調停委員を交えて話し合います
遺産分割審判 裁判官が判断します 資料や法律上の考え方をもとに分け方が示されます

※表は左右にスクロールして確認することができます。

調停では、ご家族の事情や希望を踏まえながら、柔軟な解決方法を話し合うことができます。
一方、審判では、相続人全員が納得していなくても、裁判所が結論を示します。そのため、ご自身が希望していた分け方になるとは限りません。
「話し合いがまとまらなければ、自分の希望どおりに裁判所が決めてくれる」とは限らないことを理解しておく必要があります。

遺産分割審判に進む主なケース

遺産分割審判へ進む背景には、さまざまな事情があります。

  • 不動産を売るか残すかで意見が分かれている
  • 不動産の評価額について合意できない
  • 特定の相続人が財産を取得することに反対がある
  • 生前贈与を相続分に反映するかで争いがある
  • 介護や事業への貢献を考慮してほしい方がいる
  • 相続人の一人が話し合いに応じない
  • 調停を重ねても、お互いの希望が折り合わない
  • 法定相続分と異なる分け方について合意できない

たとえば、長男が父親の実家を取得したいと希望し、妹が売却して代金を分けたいと考えている場合があります。
長男が妹へ支払うお金を用意できず、不動産の評価額についても意見が合わなければ、調停での解決が難しくなることがあります。
この場合、審判では、不動産の価値や利用状況、ほかの財産の内容などを確認した上で、裁判所が分け方を判断します。

裁判所が確認する主な内容

遺産分割審判では、裁判官が相続財産や相続人の事情を確認します。

主に確認される事項

  • 誰が相続人なのか
  • 分ける対象となる財産は何か
  • 預貯金や不動産の価値はいくらか
  • 遺言書があるか
  • 各相続人の法定相続分
  • 生前に特別な贈与を受けた方がいるか
  • 財産の維持や増加に貢献した方がいるか
  • 各相続人が希望する分け方
  • 不動産を利用している方がいるか
  • 代わりに支払うお金を用意できるか

裁判所は、遺産に含まれる財産の種類や性質をはじめ、関係する事情を踏まえて判断します。
相続人の希望だけでなく、その希望を実現できるかどうかも確認されます。
たとえば、自宅を取得したいと主張していても、ほかの相続人へ支払うお金を用意できなければ、売却して代金を分ける判断が示されることがあります。

審判で決められる主な分け方

不動産がある場合は、財産の内容や相続人の希望を踏まえ、次のような分け方が検討されます。

分け方 内容
現物分割 特定の相続人が不動産などをそのまま取得します
代償分割 不動産を取得する方が、ほかの相続人へお金を支払います
換価分割 不動産を売却し、残った代金を相続人で分けます
共有分割 複数の相続人が共同で不動産を取得します

たとえば、長男が実家を取得し、次男へ相続分に見合うお金を支払う方法が代償分割です。
長男に支払うための資金がない場合は、実家を売却して代金を分ける換価分割が選ばれることもあります。
共有分割は、一見すると公平に見えます。しかし、将来の売却や修繕をめぐって新たな意見の違いが生じることがあります。
審判では、現在の分け方だけでなく、その後の管理や利用の状況も含めて判断されます。

遺産分割審判の進み方

遺産分割審判は、一般的に次のような流れで進みます。

① 調停が不成立になる

相続人全員の合意が得られない場合、遺産分割調停は不成立となります。
その後、原則として自動的に審判手続きへ移ります。

② 裁判所から今後の進め方が示される

審判へ移ると、裁判所から提出する資料や主張をまとめた書面について案内されます。
裁判所が指定した期限までに、必要な書類を提出します。

③ 相続財産と争点を整理する

預貯金、不動産、株式など、分ける対象となる財産を確認します。
あわせて、不動産の評価、生前贈与、介護の貢献など、相続人同士で意見が分かれている点を整理します。

④ 主張と資料を提出する

希望する分け方や、その理由を書面にまとめて提出します。
不動産の査定書、預貯金の取引履歴、生前贈与を示す振込記録など、主張を裏付ける資料も必要になります。

⑤ 裁判所が審理する

裁判官は、当事者から提出された書類や調査結果などを確認して判断します。必要に応じて、追加の資料提出を求められることもあります。

⑥ 審判が出される

裁判所が遺産の分け方を決め、その内容を記載した審判書が相続人へ送られます。
審判が確定した後は、その内容に沿って預貯金の解約や不動産の名義変更などを行います。

書面と資料の準備が大切です

審判では、裁判官が提出された書面や資料をもとに判断します。
ご自身の希望を伝えるだけではなく、なぜその分け方が妥当なのかを分かりやすく示すことが大切です。

準備する資料の例

  • 亡くなった方の戸籍
  • 相続人全員の戸籍
  • 預貯金の残高証明書や取引履歴
  • 不動産の登記事項証明書
  • 固定資産税の通知書
  • 不動産会社の査定書
  • 株式や投資信託の残高が分かる資料
  • 生前贈与を示す振込記録や契約書
  • 介護や事業への貢献を示す資料
  • 遺言書
  • 調停で提出した書面

たとえば、「父親を長年介護してきたので、その分を考慮してほしい」と考えている場合でも、介護をしていたという説明だけで認められるとは限りません。
介護の期間や内容、費用の負担、ほかの家族の関わり方などを整理し、資料とともに伝える必要があります。

不動産の評価が争いになる場合

遺産に不動産が含まれていると、いくらの価値があるのかについて意見が分かれることがあります。
固定資産税評価額、不動産会社の査定額、相続税評価額などは、それぞれ目的が異なるため、同じ金額にはなりません。
一方の相続人が2,000万円と主張し、もう一方が3,000万円と主張することもあります。
当事者が提出した査定書だけでは金額を決めにくい場合は、不動産鑑定士による鑑定が行われることがあります。
鑑定には費用がかかり、その負担方法について裁判所から案内されることがあります。
不動産を取得したい方は、評価額だけでなく、ほかの相続人へ支払う資金を準備できるかどうかも確認しておきましょう。

生前贈与がある場合

亡くなった方から一部の相続人へ、生前に多額の贈与が行われていることがあります。
結婚や住宅購入、事業を始めるための資金など、相続財産の前渡しと考えられる贈与は、遺産分割で考慮される場合があります。
これを「特別受益」といいます。
たとえば、長男だけが父親から住宅購入資金として1,000万円を受け取っていた場合、その金額を考慮して相続分を計算することがあります。
ただし、親からお金を受け取っていれば、すべてが特別受益になるわけではありません。
贈与の目的や金額、亡くなった方の生活状況などを確認して判断されます。送金記録、贈与契約書、通帳などの資料が重要になります。

介護や事業への貢献がある場合

一部の相続人が、亡くなった方の介護を長期間担っていたり、家業を無償で手伝ったりしたことで、財産の維持や増加に特別な貢献をしていることがあります。
このような貢献を相続分に反映する仕組みを「寄与分」といいます。
ただし、家族として通常期待される範囲の介護や手伝いだけでは、寄与分として認められないことがあります。

確認されることの例

  • 介護を行った期間
  • 介護の内容や頻度
  • 仕事を辞めるなどの負担があったか
  • 介護サービスの利用状況
  • 亡くなった方の財産がどの程度保たれたか
  • 家業を手伝った期間や働き方
  • 給料や報酬を受け取っていたか

介護記録、領収書、預貯金の履歴、勤務状況が分かる資料などを整理しておくことが大切です。

審判で扱えない問題もあります

遺産分割審判では、亡くなった方が死亡時に所有していた財産を、相続人の間でどう分けるかを決めます。
そのため、相続に関連する問題であっても、すべてを審判の中で解決できるわけではありません。

別の手続きが必要になることがある問題

  • 相続人の一人による預貯金の使い込み
  • 不動産が本当に遺産に含まれるかという争い
  • 遺言書が有効かどうかという争い
  • 葬儀費用を誰が負担するか
  • 亡くなった方の借金を誰が支払うか
  • 遺産から生じた家賃収入の精算

調停では、相続人全員が合意すれば、こうした問題も含めて話し合えることがあります。
一方、審判では、遺産分割の対象にならない問題を原則として判断できない場合があります。
何を審判で主張し、何について別の手続きを検討するのかを整理する必要があります。

審判の内容に納得できない場合

家庭裁判所の審判に納得できない場合は、「即時抗告」という不服申立てを検討します。
即時抗告をすると、高等裁判所が改めて内容を確認します。ただし、抗告状は審判をした家庭裁判所へ提出します。
即時抗告には期限があります。原則として、審判の告知を受けた日から2週間以内に手続きする必要があります。
「内容に納得できないので、しばらく考えてから対応する」という進め方では、期限を過ぎる可能性があります。
審判書が届いたら、どのような理由でその結論になったのかを確認し、早めに対応を検討しましょう。

審判が確定した後の手続き

審判が確定したら、その内容に沿って財産を分けます。

主な手続き

  • 預貯金の解約や名義変更
  • 不動産の相続登記
  • 株式や投資信託の名義変更
  • 不動産を取得する方からほかの相続人への支払い
  • 不動産の売却と代金の分配
  • 相続税申告

審判で一人の相続人が不動産を取得することになった場合は、審判書などを使って相続登記を進めます。
また、ほかの相続人へお金を支払うことが決められている場合は、審判で示された期限や方法に従います。
支払いが行われない場合は、強制執行の手続きが必要になることもあります。確定した審判に基づく義務が履行されない場合、強制執行を検討できることがあります。

審判へ移る前に解決できることもあります

調停が進んでいる途中で、「もう話し合っても意味がない」と感じることがあるかもしれません。
しかし、審判では裁判所が法律や資料に基づいて結論を出すため、ご家族の希望をすべて反映できるとは限りません。
たとえば、実家をすぐには売らず、一定期間配偶者が住み続けた後に売却するなど、相続人全員の合意があれば柔軟な分け方を検討できます。
審判になると、そのような細かな調整が難しくなる場合があります。
審判になった場合の見通しを確認した上で、調停中に合意できる余地がないかを検討することも大切です。

弁護士へ相談することで整理できること

遺産分割審判では、裁判所へ提出する書面や資料が判断に影響します。
感情的な対立の経緯を伝えるだけではなく、法律上の争点と、それを裏付ける資料を整理する必要があります。

弁護士へ依頼できること

  • 相続人と相続財産の確認
  • 審判で争われている点の整理
  • 主張書面の作成
  • 証拠となる資料の検討
  • 不動産の評価方法の確認
  • 特別受益や寄与分に関する主張
  • 裁判所とのやり取り
  • 審判期日への対応
  • 即時抗告を行うかどうかの検討
  • 審判確定後の手続きの調整

審判へ移ってから相談することもできますが、調停の段階から今後の見通しを考えておくと、必要な資料を早めに準備できます。

豊中・大阪で遺産分割審判にお困りの方へ

豊中・大阪で遺産分割審判にお困りの方へ

遺産分割審判では、相続人同士の話し合いではなく、裁判所が提出された資料や主張をもとに財産の分け方を判断します。そのため、ご自身の希望と、その理由を裏付ける資料を分かりやすく整理することが大切です。
弁護士法人Legal Homeでは、初回60分の無料相談で調停の経過や裁判所から届いた書類を確認し、審判で整理すべき点や必要な資料を一緒に確認します。まだ調停中の場合も、審判へ移ったときの見通しを踏まえながら対応を考えます。
不動産の価値が争われている場合や、登記、売却、相続税申告が必要な場合は、不動産鑑定士、司法書士、税理士などとも連携して進めます。
調停が不成立になった方や、審判へ移るという案内を受けた方、審判書の内容に納得できない方は、書類の提出期限や不服申立ての期限を過ぎる前にご相談ください。

代表弁護士 藤原 武士

執筆者

弁護士法人Legal Home

代表弁護士 藤原 武士

経歴

  • 愛知県豊橋市出身
  • 東北大学法学部卒業
  • 2010年8月司法修習終了(63期)
  • 2010年9月他事務所で勤務
  • 2017年10月藤原武士法律事務所 開設
  • 2020年8月法人化し、弁護士法人藤原武士法律事務所へ。豊中オフィス開設
  • 弁護士法人Legal Homeへ名称変更
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